たくしは深くあなたを恨《うら》んでおります。こうして再びお目にかかったからは、あなたをこのまま帰すことはなりません」
女は男の手を握って、柩《ひつぎ》の前へゆくかと思うと、柩の蓋《ふた》はおのずと開いて、二人のすがたはたちまちに隠された。蓋はもとの通りにとじられて、喬生は柩のなかで死んでしまったのである。
となりの老翁は喬生の帰らないのを怪しんで、遠近《おちこち》をたずね廻った末に、もしやと思って湖心寺へ来てみると、見おぼえのある喬生の着物の裾《すそ》がかの柩の外に少しくあらわれているので、いよいよ驚いてその次第を寺僧に訴え、早速にかの柩をあけて検《あらた》めると、喬生は女の亡骸《なきがら》と折り重なっていて、女の顔はさながら生けるがごとくに見えた。僧は嘆息して言った。
「これは奉化州判の符という人の娘です。十七歳のときに死んだので、かりにその遺骸をこの寺にあずけたままで、一家は北の方へおもむきましたが、その後なんの消息《たより》もありません。それが十二年後の今日《こんにち》に至って、こんな不思議を見せようとは、まことに思いも寄らないことでした」
なにしろそのままにしてはおかれな
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