れ。そうして、今後ふたたび湖心寺のあたりへ近寄るなと言い聞かせた。
家へ帰って、その通りに朱符《しゅふ》を貼っておくと、果たしてその後は牡丹燈のかげも見えなくなった。それからひと月あまりの後、喬生は袞繍橋《てんしゅうきょう》のほとりに住む友達の家をたずねて、そこで酒を飲んで帰る途中、酔ったまぎれに魏法師の戒《いまし》めを忘れて、湖心寺の前を通りかかると、寺の門前には小女の金蓮が立っていた。
「お嬢さまが久しく待っておいでになります。あなたもずいぶん薄情なかたでございますね」
否応《いやおう》いわさずに彼を寺中へ引き入れて、西廊の薄暗い一室へ連れ込むと、そこには麗卿が待ち受けていて、これも男の無情を責めた。
「あなたとわたくしとは素《もと》からの知り合いというのではなく、途中でふとゆき逢ったばかりですが、あなたの厚い情けに感じて、わたくしの身をも心をも許して、毎晩かかさずに通いつめ、出来るかぎりの真実を竭《つく》しておりましたのに、あなたは怪しい偽道士《にせどうし》のいうことを真《ま》にうけて、にわかにわたくしを疑って、これぎりに縁を切ろうとなさるとは、あまりに薄情ななされかたで、わ
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