てあって「故《もとの》奉化州判符女、麗卿之|柩《ひつぎ》」としるし、その柩の前には見おぼえのある双頭の牡丹燈をかけ、またその燈下には人形の侍女《こしもと》が立っていて、人形の背中には金蓮の二字が書いてあった。それを見ると、彼はにわかにぞっ[#「ぞっ」に傍点]として、あわててそこを逃げ出して、あとをも見ずに我が家へ帰ったが、今夜もまた来るかと思うと、とても落ちついてはいられないので、その夜はとなりの老翁の家へ泊めてもらって、顫《ふる》えながらに一夜をあかした。
「ただ怖れていてもしようがない」と、老翁はまた教えた。「玄妙観《げんみょうかん》の魏《ぎ》法師は故《もと》の開府の王真人《おうしんじん》の弟子で、おまじないでは当今第一と称せられているから、お前も早くいって頼むがよかろう」
その明くる朝、喬生はすぐに玄妙観へたずねてゆくと、法師はその顔をひと目みておどろいた。
「おまえの顔には妖気が満ちている。いったい、ここへ何しに来たのだ」
喬生は、その座下に拝して、かの牡丹燈の一条を訴えると、法師は二枚の朱《あか》い符《ふ》をくれて、その一枚は門《かど》に貼れ、他の一枚は寝台《ねだい》に貼
前へ
次へ
全11ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
瞿 佑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング