嫌《きら》う。
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場面
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奥の方一面谷の底より這《は》い上りし森のくらやみ[#「くらやみ」に傍点]、測り知らず年を経たるが、下手《しもて》ようように梢《こずえ》低まり行きて、明月の深夜を象《かたど》りたる空のあお[#「あお」に傍点]色、すみかがやきて散らぼえるも見ゆ。上手《かみて》四分の一がほどを占めて正面の石段により登りぬべき鐘楼|聳《そび》え立ち、その角を過れる路《みち》はなお奥に上る。下手舞台のつくる一帯は谷に落ち行く森に臨み、奥の方に一路の降るべきが見えたり。下手の方、路の片隅《かたすみ》によりて月色|渦《うず》をなし、陰地には散斑《ばらふ》なる蒼《あお》き光、木の間を洩《も》れてゆらめき落つ。風の音時ありて怪しき潮のごとく、おののける樹《き》々の梢を渡る。
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第一段
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誤ち求めて山に入りたる若僧と僧徒妙信とあり。若僧が上手鐘楼の角により奥の方を伺える間、妙信は物おじたる姿にて中辺に止まり、若僧のものいうをまつ。不安なる間。
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