聞いた秘密よ。」
「いいの、ジョウ、かあさんはメグをなぐさめますから、あなたはローリイをつれていらっしゃい。すっかりしらべて、こんないたずらやめさせます。」
 ジョウはかけ出していき、おかあさんはメグに、ブルック氏のほんとの気持を、すっかり話して聞かせました。
「それで、あなたの気持はどう?あの人があなたのために家庭がつくれるのを待っていますか? それとも、なにもきめないでおきますか?」
「今度のことで心配させられたので、これからずっと、もしかしたら、いつまでも、恋人なんかのことにかかわりたくありません。もしあのかたが、こんなばかげたことを御存知ないなら、いわないで下さい。ジョウとローリーにも口どめして下さい。あたし、だまされたり、からかわれたりしたくありません。ほんとに、はじさらしですわ。」
 やさしいメグが、いつになく怒っているのを見て、おかあさんは、けっしてしゃべらせぬこと、これからもよく注意するといって、なだめました。
 ローリイの足音が聞えると、メグは書斎にかけこみました。ジョウは、かれが来ないといけないと思って、なんの用事か告げませんでしたが、おかあさんの顔を見たとき、すぐに察して帽子をひねくりまわしました。ジョウは、部屋から出ていくようにといわれ、犯人の逃亡をふせぐために、玄関へ来ていましたから、会見のもようは、メグにもジョウにもわかりませんでした。話がすんで二人が部屋によびこまれたとき、ローリイはいかにも後悔しているようでした。メグに、ローリイは謝罪し、ブルック氏がこのいたずらについては、なにも知らぬと保証しました。メグはそれでほっとしました。なお、ローリイは、きっぱりといいました。
「ぼくは死んでもブルック先生に話しません。どうか許して下さい。だけど、一ヶ月くらいあなたから口をきいてもらえなくても、しょうがないと思っています。」
「許してあげますわ、でも、あまり紳士らしくないやりかたですわ、あなたが、こんな意地わるをなさろうとは思いませんでした。」
 ジョウは、そのあいだも、ひややかな態度で立っていました。非難の気持をゆるめないようにつとめました。ローリイは、すっかり感情をそこね、話がすむと、おかあさんとメグにあいさつして出ていってしまいました。
 ジョウは、ローリイにもっと寛大にすればよかったと思いました。おかあさんとメグが二階へいってしまうと、ローリイにあいたくなり、返す本をかかえておとなりへ出かけていきました。女中にむかって、
「ローリイさん、いらっしゃいますか?」と、尋ねると、在宅だがあわないでしょうといいます。病気かと重ねて尋ねると、
「いいえ、じつはおじいさまと口論なさいまして、お怒りになって、お部屋へ閉じこもってしまって、食事の支度ができたので、扉をたたいたのですが御返事ありません、おじいさまもお怒りで、まったく、こまっております。」と、いう返事でした。
「あたしいって、ようす見て来ましょう。二人ともこわくないから。」
 ジョウはあがっていき、ローリイの部屋の扉をたたき、よせといっても、かまわずたたき、扉を開けたとき、さっととびこみました。そして、床にひざまずき、へりくだって。
「意地わるしてごめんなさい。仲なおりに来たの、仲なおりするまで帰らない。」と、いいました。
 ローリイは、すぐに仲なおりして、ジョウを立たせました。だが、まだぷんぷん怒っています。どうしたのか尋ねると、「きみのおかあさんから、だまっていろといわれたことを、しゃべらなかったもので、おじいさんからこづきまわされたのだ。おじいさんは、ほんとのことをいえというが、メグのかかり合いさえなければ、ぼくのやったいたずらだけは、いうつもりだったが、それができないから、だまってがまんしたんだ。だけど、しまいにえり首をつかまえたんで、ぼくはかっとなって、なにをやり出すかわからないので、部屋からとび出したんだ。」
「そうよ[#「そうよ」は底本では「そうを」]、きっとおじいさんも後悔していらっしゃるわ。仲なおりなさい、あたしもいっしょにいってあげるから。」
「だめだ、わるくないのに、二度もあやまるのはいやだ。だいたい、おじいさんは、ぼくをあかんぼあつかいになさる。かれこれ世話をやいてほしくないということを、おじいさんに知らせてやるんだ。」
「では、あなたこれからどうするの?」
「おじいさんがあやまって、ぼくが、どんなことがあったのか話せないといったら、信用してくれればいい。」
「それや、むりだわ。あたしできるだけ説明してあげるわ。あなたも、ここにいつまでもいて、芝居がかったまねをして、なんの役にたつのよ?」
「ぼくは、いつまでも、ここにいるつもりはないよ。そっと家出して、旅行にいっちゃうんだ。おじいさんは、ぼくがいなくて、さびしくなったらわかる
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