お祈りするのたのしそうね。」
「ええ、あなたもお祈りなさるといいですよ。化粧室を礼拝堂につくってあげましょう。おばさんがいねむりをなさっているあいだに、じっとすわって、神さまにおねえさんをおまもり下さるように、お祈りあそばせ。」
エミイは、その思いつきが気にいり、礼拝堂をつくるように頼みました。
「マーチおばさんがおなくなりになったら、この宝石はどうなるのかしら?」
「あなたと、おねえさんたちのところへいくのですよ。遺言状を見ました。あたしは。」
「まあ、うれしい。今、下さればいいのに。」
「今は早すぎます。はじめに結婚なさるかたに真珠、それから、あなたがお帰りになるときには、トルコ玉の指輪、おくさまはあなたが、お行儀がいいといって、ほめていらっしゃいました。」
「ほんと? あの美しい指輪がいただけるの。まあ、うれしい。やっぱりおばさん好き。」と、エミイは、うれしそうな顔をして、それをきっと手にいれようと心をきめました。
その日から、エミイは、おとなしく、なんでもいうことを聞いたので、マーチおばさんはじぶんのしつけが成功したと思って、たいそう満足しました。エスターは、礼拝堂をつくってくれ、聖母の絵をかいてくれました。エミイは、心をこめてここに祈り、ベスの病気をなおし、じぶんを正しく導いて下さるように願いました。
エミイは、善良になるために、マーチおばさんのとこに遺言状をつくろうと思いました。遊び時間に、エスターから法律上の言葉を教えてもらって、じぶんの所持品を公平にわけることを書きました。
エスターは証人となって署名してくれました。エミイは、ローリイに、第二の証人になってもらうつもりでした。ところで、この部屋には、流行おくれの服がいっぱいはいったタンスがあって、エスターはエミイに、それで自由に遊ばせました。その服を着て、長い姿見の前をいったり来たりして、わざとらしくおじぎをしたり、衣ずれの音をさせたりするのが、おもしろくてたのしみでした。
この日は、そんなことを、あまり夢中でやっていたので、ローリイの鳴らしたベルにも気がつかなかったし、そっと来てのぞいたのも知りませんでした。エミイは、青色のドレスと黄色の下着をつけもも色のふちなし帽子をかぶり、扇子を使ってすましてねり歩いたのでした。ローリイが、後でジョウに話したところによると、エミイがそうやって気どって歩いていくあとから、おおむのポーリーがそのまねをして歩き、ときどき立ちどまって、
「きれでしょ、あっちいけ、おばけさん、おだまり、キッスして! ハッ! ハッ!」と、どなりましたが、それはとてもおかしな光景だったということでした。
ローリイは、おかしさのあまり、ふき出しそうになるのを、やっとこらえました。そして、ていねいに迎えられ、これを読んでよと、あの遺言状を見せられました。
遺言状
わたし、エミイ・カーチス・マーチは、正気にて所有物全部を左記の如く分配します。父上には一ばんいい絵、スケッチ、地図、額ぶちづき美術品。
母上には、衣類全部、ただしポケットのある青いエプロンはべつ。それから、わたしの肖像画とメダルを真心こめて。
メグねえさんには、トルコ玉の指輪(もしいただいたら)鳩のついている緑の箱と、首かざりのためのレース、姉上をかいたスケッチ。これは姉上の愛する妹のかたみ。
ジョウねえさんには、一度なおした胸ピンと、青銅のインクつぼ(ふたはおねえさんがなくした)それから、原稿を焼いたおわびに一ばん大切な石膏のうさぎ。
ベス(もしわたしの後まで生きていれば)には、人形、小さなタンス、扇子、麻のカラー、それから病気がよくなり、やせてなければ、新らしいスリッパ、それから、わたしがいつも古ぼけたジョアンナのことをからかったことを、ここで後悔しておきます。
お友だちであり隣人であるローリイには、紙のかばんと、首がないようだとおっしゃったが、粘土細工の馬。つぎに心配のときに親切にして下さったお礼に、わたしの絵のなかで気にいったものさしあげます。ノートルダムが一ばんよくできています。
大恩人ローレンス氏には、ふたに鏡のついた紫の箱、ペンいれによろし。わたしたち一家、ことにベスへの御厚意をありがたく思っていることを思い起させるでしょう。
なかよしのキティ・ブライアントには、青色のエプロンと、金色のじゅず玉の指輪を、キッスとともにあげる。
ハンナには、ほしがっている紙箱と、つぎはぎの細工を全部、わたしを思い出してもらうためです。
わたしの大切な所有品を全部処分せり、みなみな満足して死者を非難せざるよう望む。わたしはすべての人を許し、最後のラッパの鳴りひびくとき、みな再会することを信ず。アーメン、この遺言状は、千八百六十一年十一月二十日、わが手によって認め
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