もう一枚買うかもしれないけど、それじゃずうずうしいわ。だから、おとなしく待っていらっしゃい。」
ジョウは、仕度にあわてて、針で指をさしたので、ますますふきげんになって、エミイをしかりつけました。
エミイは泣き出しました。メグがなだめていると、階下でローリイがよんだので、二人は、いそいでおりていきました。二人が出かけていくのを、エミイは窓から見おろして、おどかすようにさけびました。
「今に、後悔するわよ。ジョウさん、おぼえていらっしゃい!」
「ばかな!」と、ジョウがやり返して、玄関の扉をぴしゃっと閉めました。
「七つの城」のお芝居は、とてもよかったので、三人はたのしく見物しました。けれど、ジョウはときどき、きれいな王子や王女に見とれながらも、[#「、」は底本では「。」]心にくらい影がさしました。妹が、後悔するわよといった言葉が、あやしく、耳にのこっていたからでした。
ジョウとエミイは、前からよくはげしいけんかをしました。二人とも気がみじかく、かっとするとひどくめんどうなことになるのでした。けれど、二人とも長く怒ることはなく、けんかの後では、たがいによくなろうとするのですが、日がたつと、またくり返すことになるのでした。
二人が家へ帰ったとき、エミイは知らん顔をして本を読んでいました。ジョウは、帽子を二階へしまいにいきましたが、この前けんかをしたとき、エミイがひき出しをひっくり返したので、たんすやかばんや、たなの上などをしらべましたが、なんともなっていないので、エミイがじぶんを許してくれたものと思いました。
けれど、それはジョウの思いちがいであることが、あくる日になってわかりました。その日の午後ジョウ[#「ジョウ」は底本では「メグ」]は血相をかえて、メグとベスとエミイが話しあっているところへ、とびこんで来て、息をきらして尋ねました。
「だれか、あたしの原稿とった?」
メグとベスは、いいえといいましたが、エミイは炉の火をつついてだまっていました。
「エミイ、あなたですね。」
「あたし、持ってないわ。」
「じゃ、どこにある?」
「知らないわ。」
「うそつき! 知らないとはいわさないわ。さあ、早い白状なさい。白状しないか。」
ジョウは、ものすごい顔でどなりました。
「いくらでも怒るがいいわ。あんなつまらない原稿なんか、もう出ないわよ。」
エミイは、どうにでもなれ
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