こんでそれを病気のさびしいかれに、分けあたえたいと思いました。
「では、カーテンをおろさずにお好きなだけ見せてあげます。いいえ、それより家へいらっしゃい。おかあさんはいい人よ、ごちそうたくさんして下さるわ。ベスは歌をうたい。エミイはダンスをする。メグとあたしはおかしなお芝居の道具を見せて笑わしてあげるわ。そうして、みんなでおもしろく遊ぶのよ。でも、おじいさん来させて下さる?」
「あなたのおかあさんが頼んで下さればね。おじいさんは親切で、ぼくのすきなことをさせてくれます。」
 ローリイは、マーチ家の人たちのことについてたくさんの興味をもち、ジョウの口から姉妹たちのことを聞いてうれしそうでした。ことに、ジョウが、せっかちの、気むずかしいおばさんの世話をしにいく話をおもしろがって、そのおばさんのところへ気どった老紳士が結婚申込に来たとき、むく犬がその紳士のかつらをひっぱって、はげ頭がむき出しになった話では、ころげまわって、涙が出るほど笑ったので、女中がおどろいて、のぞきに来たくらいでした。
 ジョウは、話が成功したのでとくいになって、家のお芝居のこと、いろんな計画のこと、おとうさんのこと、その希望や心配、家のなかの一ばんおもしろいことなど、のこらず話しました。それから本の話になりましたが、ジョウはローリイがやはり本ずきで、じぶんよりもたくさん読んでいるのをうれしく思いました。
「そんなに本がすきなら[#「すきなら」は底本では「すきなち」]、おじいさんの文庫へいきましょう。」
 文庫は、ジョウをよろこばせました。ずらりとならんだ本のほかに、絵や彫刻や古い品物のはいったたんすがあり、ゆったりしたイスがそなえてありました。ジョウは、そのビロウド張りのイスに腰をかけて、
「まあ、りっぱだ! あなたは、一ばんこの世でしあわせなぼっちゃんですよ!」と、いいましたがそのときベルが鳴りました。あ、おじいさんだと、はっと、しましたが、まもなく女中が来て、お医者さんが来たといい、ローリイは診察してもらいに出ていきました。ジョウは、ほっとして、文庫のなかを見物しましたが、老紳士のりっぱな肖像画の前に足をとめてながめました。そのとき、扉が開いたけれど、ジョウはふり返ってもみずに、
「この人、親切そうな目をしていらっしゃるから、あたしもうこわくないわ。でも口もとはきつそうだし、とても意地っぱりみた
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