ジョウは、親切のあふれた顔をして、片手にはおおいをした皿をもち、片手にはベスの三匹の子ねこをだいてあらわれました。
「おじゃまにあがりました。荷物までしょって、おかあさんがよろしくって。メグはお手製の白ジェリイをお見舞ですって。おいしいんですよ。それから、ベスはねこをおなぐさみにつれていくようにって。お笑いになるでしょうが、ことわりきれなくて。」
 ローリイは、ねこを見て笑い、はにかみを忘れ、すぐにうちとけました。ジョウが、皿のおおいをとると、緑の葉のわと、エミイの秘蔵のジェラニュームの赤い花をそえた白ジェリイがあらわれました。
「ああ、きれいだ、食べるのがおしい。」
「たいしたものではないの。ただ、みんながお目にかけたかっただけ。でも、あっさりしてるからめしあがれてよ。それにやわらかいから、のどが痛くても、するっとはいってしまうわ。それはそうとこの部屋なんて気持がいいんでしょう。」
「女中が女中なので、片づいていなくて。」
「じゃ、あたし二分間で片づけてあげるわ。」
 ジョウは、てきぱきとはたらきました。部屋の感じが一変したので、ローリイは満足してお礼をいいました。
「さあ、今度はぼくがお客さまをよろこばせなくちゃ。」
「いいえ、あたしはあなたをなぐさめに来たのよ。なにか本を読んであげましょうか?」
「ありがとう、でもそこにある本、みんな読んでしまったんです。だから、あなたさえよかったら、お話のほうがいいんだけど。」
「いいですとも、一日だって話すわ。ベスはあたしがおしゃべりをはじめたら、いつやめるかわからないなんていうのよ。」
「ベスさんというのは、ときどき小さなバスケットをもって出ていく、あかい顔の。」
「ええ、いい子ですわ。」
「すると、あの美しいかたがメグさんで、まき毛のかたがエミさんですね?」
「どうしてごぞんじ、そんなによく。」
 ローリイは、さっと顔をあかめました。
「だって、ここにいると。たのしそうなみなさんがよく見えるんですもの、夜、カーテンを閉め忘れた窓ごしに、おかあさんをかこんで、いらっしゃるところも見えます。おかあさんのお顔は、やさしく花のようです。ああ、だけど、ぼくには母はいない。」
 母の愛にうえた少年の目は、ジョウのあたたかい胸をうごかしました。すなおなジョウは、じぶんが、いかにゆたかな家庭の愛に恵まれているかを感じたので、よろ
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