。ですから、道中おかあさんのお世話ができれば、ほんとうに満足です。」
 メグは、あやうくゴム靴をおとしそうになるほど、感謝にあふれました。
「みなさん、なんて御親切なのでしょう。おかあさんはきっとよろこんでお受けいたすでしょう。あなたがお世話下されば安心でございますわ。お礼の申しようもありません。」
 メグは、ブルック先生を、客間へ案内しておかあさんをよびにいきました。
 ローリイが、マーチおばさんからの手紙を持って帰ったときには、すべての支度がととのっていました。その手紙のなかには頼んだお金と、おばさんが前からたびたびいっていたことが書いてありました。すなわち、マーチが軍隊にはいることはいけないといつもいっていたし、どうせろくなことにならないと、注意しておいたが、こんなことになった。今後はじぶんのいうことにしたがってほしいとありました。おかあさんは手紙を火にくべ、お金を財布にいれ、きゅっと口をむすんで、また支度をつづけました。
 みじかい午後が暮れました。外の用事はすべてすみ、メグとおかあさんは、必要なぬいもの、ベスとエミイは夕飯の支度、ハンナはアイロンかけに、みんないそがしく手をうごかしていましたが、どうしたものか、ジョウがまだ帰りません。みんなそろそろ心配しはじめていると、ジョウがみょうな表情で帰って来ました。そして、すこし声をつまらせて、
「これおとうさんの御病気がよくなって、家へお帰りになれるようにと思ったあたしの心持だけなの。」と、いっておかあさんにおさつのたばをわたしました。
「まあ、どこから手にいれたの? 二十五ドル、ジョウ、あんたはとんでもないことしやしませんか?」
「いいえ、りっぱなあたしのお金です。じぶんのもの売ったお金です。」
 ジョウが帽子をぬぐと、みんなは、あっ!と、おどろきの声をあげました。ふさふさした髪の毛はみじかく切られていました。
「このほうが、さっぱりして気持がいいわ。じぶんの髪をじまんして、虚栄心を起しそうだったが、これでもいいわ。どうぞお金とってちょうだい。」
「ジョウ、おかあさんは、満足とは思いませんが、しかりはしません。あなたが愛のために、虚栄心を犠牲にしたことはよくわかります。でもね、そんなことまでする必要はなかったのです。いつか後悔するでしょうね。」
「いいえ、そんなことありませんわ。」と、ジョウは、じぶんのしたこと
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