い。つぎの汽車は明日の朝早く出るはずです。それでいきます。」
「そのほかには? 馬の用意はできています。どこへでもいきます。なんでもします。」
「それから、マーチおばさんのところへ手紙をとどけて下さい。ジョウ、ペンと紙とを下さい。」
 手紙が書かれ、ローリイはわたされました。
「では、すみませんがお願いします。めちゃに馬を走らせてけがなんかしないで下さい。そんなにいそがなくてもいいんですからね。」
 けれど、その言葉は守られず、ローリイは五分の後には、はげしいいきおいで馬を走らせていました。
「ジョウ、あなたは事務所へいって、あたしがいけないってことわって来て下さい。途中で買い物をして来て下さい。今書きますから。それからベスはローレンスさんのとこで、古いぶどう酒を二本いただいて来て下さい。おとうさんのためなら、いただくのをはずかしいと思ってはいられません。エミイ。ハンナに黒革のトランクをおろすようにいって下さい。メグ、あなたはおかあさんの、さがしものを手つだって下さい。あたしはだいぶうろたえていますからね。」
 手紙を書いたり、考えたり、さしずしたり、すべてを一度にしなければならないおかあさんに、メグはじぶんたちではたらくから休んでいてほしいといいました。けれど、おかあさんに休むことが、どうしてできましょう。無事でたのしかった家は、今や不吉なあらしに吹きあらされ、みんなは木の葉のように、ふきとばされるほかはありませんでした。
 ローレンス老人は、ベスとともに来ました。親切な老人は、病人のためになりそうなもの[#「もの」は底本では「うの」]を、考えられるだけ考えて持って来ました。そして、夫人の留守中は、娘たちの世話はひき受けるといいましたので、おかあさんは安心することができました。また、老人は、なんでも必要なものは提供するといい、いっしょにワシントンへつきそっていくとさえいい出しました。けれど、長い旅に老人にいってもらうことは、とてもできませんので好意を感謝してことわりました。
 老人が帰っていってまもなく、メグが片手にゴム靴、片手に紅茶を持って玄関をかけていくと、ばったりブルック先生にあいました。
「今、聞いたのですが、ほんとうにお気のどくです。僕はおかあさんのおつきそいをしていこうと思って来たのです。ローレンスさんが、ぼくをワシントンまでいかせる用事ができたのです
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