さんから[#「から」は底本では「かち」]はなれたくないので、家庭教師として外国へいけるのをことわったこと、そして、今でもなくなったおかあさんの看病をしてくれたおばあさんに、まい月、仕送りをしていること、それをだれにもいわずにいたことなど、ローリイのおじいさんが、メグのおかあさんに話したことを話し、どうかそのりっぱなブルック先生を満足させるように、よく勉強しなければいけないと、まるで、ねえさんみたいに、ローリイにいって聞かせました。そして、こうつけ加えました。
「ごめんなさい。お説教したりして。けれど、まるでほんとの兄弟みたいな気がするものですから、思ったとおりのこというのよ。」
 ローリイは、親切なメグの言葉をありがたく思い、
「ねえさんのように、ぼくの欠点をいって下さってありがとう。今日はぼくふきげんだったけど、これでさっぱりした。」
 ローリイは、できるだけ愉快にしようとして、メグの糸をまいてやったり、ジョウをよろこばそうとして、詩をうたったり、ベスに松ぼっくりを落してやったり、エミイの写生を手つだってやったりはたらきばち会の会員にふさわしいように努めました。そのうちに、ハンナの知らせるベルが聞えました。みんなが家へ帰る時間です。ローリイは、
「ぼく、また来てもいい?」
 メグは、にこにこして、
「ええ、おとなしくして、本が好きになれたらね。」
「好きになります。」
「じゃ、いらっしゃい、あみもの教えてあげるわ。スコットランド人は、男でもあみものするのよ。それに、今とても靴下の注文があるんですって。」
 その晩、ベスはローレンス老人のためにピアノをひきましたが、ローリイはそれをカーテンのかげにたたずんで聞きました。ベスのあどけない音楽は、ローリイの気持をしずめてくれ、おじいさんのことが、しみじみとなつかしく思われるのでした。そして、その日の午後のメグの話を思い出しながら、よろこんで犠牲をはらうつもりで、
「ぼくは、空中楼閣なんてすてて、おじいさんが望むだけ、いつまでも、いっしょにいてあげよう。おじいさんは、ぼくだけしか、頼る人がないんだもの。」と、ひとり言をいいました。

          第十四 秘密

 十月にはいると、寒さもきびしくなり、日ざしもみじかくなったので、ジョウは屋根部屋でいそがしい日を送りました。最後のページをおわって、じぶんの名を花文字で書
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