た。
「ほかには、なにか望みはないの?」
「あのかわいいピアノをいただいたから、ほかになんにも望みはありません。」
 すると、エミイがいいました。
「あたしは、絵をかきにローマへいき、りっぱなものをかいて、世界中で一ばんえらい画家になることですわ。」
「ぼくたち、なかなかの野心家ですね。ベスのほかは、金持になり、有名になり、あらゆる点でえらくなろうというのですから。」と、ローリイがいうと、ジョウが、
「今から十年たって、みんな生きていたらあつまって、だれが望みをとげたか、だれが望みに近づいたか見ましょうよ。」と、いいました。
「そしたら、あたしいくつ? 二十七ね。」と、メグ。すると、すぐにジョウが、
「ローリイとあたしが二十六、ベスが二十四、エミイが二十二、なんとみなさん、相当の御先輩というわけね。」
「ぼくは、それまでになにか、じまんになるようなことしたいな、だけど、ぼくはこんな怠け者だから、だめだろう。ねえ、ジョウ。」
「おかあさんが、あなたにはなにかいい動機があれば、きっとすばらしいことなさるって、いってらしたわ。」
「そうですか。ぼくやります。ぼくは、おじいさんの、気にいるようにしたいんだが、できないんですよ。おじいさんは、後つぎにして、インド貿易商にしたがっているんです。だけど、ぼくいやだ。大学へ四年いくだけで、満足して下さればいいのに、ああ、おじいさんを世話して下さるかたがあれば、ぼくは明日にも家をとび出すんだがなあ。」
 ローリイは、ひどく気がたかぶっていました。かれには青年の熱情があり、じぶんのちからで世の荒浪をのりきっていこうとして、いるのでした。ジョウは同情して、
「あなたの船で海へのり出し、したいほうだいなことして、あきるまで帰らなければいいわ。」と、じぶんの好きな空想であおりました。びっくりしたメグはいいました。
「いけないわ。ジョウ、あんなこといって、ローリイもそんな忠告聞いてはだめ。あなた大学で一心に勉強すれば、おじいさんもいつまでもがんこなこといわないで、きっとあなたの望みをかなえて下さいます。だから、さびしがったり、いらいらしないで、じぶんの務めをはたすようになさいね。そうすれば、ブルック先生のように、みんなからたっとばれ愛されるようになります。」
 それから、メグは、ブルック先生が、おかあさんのなくなるまで孝養をつくしたこと、おかあ
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