、のぼったりすべったりで、いかれそうにもないわ。」
ジョウがいうと、ローリイも、
「ぼく、ベスの道づれになりますよ。でも、ぼくがその旅におくれたら、やさしい言葉をかけてくれるでしょうね?」
ベスは、なんと返事してよいかこまったようでしたが、快活にいいました。
「だれだって、ほんとはいきたい気持で、一生、努力の旅をつづけたら天の都へいけると思うわ。」
しばらく沈黙がつづいた後、ジョウがいいました。
「あたしたちの勝手に考える空中楼閣がみんなほんとのものになって、そこに住むことができたら、どんなにおもしろいでしょう。」
「ぼくは見たいだけ世界を見物してから、ドイツにおちついて、好きなだけ音楽を勉強して、有名な音楽家になるんです。けれど、ぼくはお金だとか、商売とかすこしも気にかけずに、じぶんの好きなように暮すんです。これがぼくの気にいっている空中楼閣です。」
ローリイがそういうと、メグがつぎをつづけました。
「あたしは、いろいろぜいたくなものが、たくさんあるうつくしい家がいいわ。おいしい食べもの、きれいな服、りっぱな道具、感じのいい人たち、そして、お金は山ほどあるの。あたしその家のおくさんで、召使をたくさん使って。でも怠けたりしないで、いいことをして、みんなからかわいがられたい。」
ジョウは、ずばりと、
「おねえさんは、なぜりこうでやさしい夫と、天使のような子供がいてと、おっしゃらないの。それがなかったら、おねえさんの空中楼閣はできないわ。」と、いいました。
「あなたの空中楼閣には、馬とインクつぼと小説しかはいっていないんでしょう?」と、メグはすこしむっとしていいかえしました。
「いいじゃないの。アラビア馬のいっぱいはいった馬屋と、本をつみあげた部屋と、魔法のインクつぼがあれば、あたしは、そのインクつぼで、ローリイの音楽とおなじくらい、有名な作品を書くんだわ。だけど、あたしその空中楼閣へはいる前に、なにかすばらしい英雄的なこと、そうね、あたしが死んでも人から忘れられないようなこと、やってみたいわねえ。そうだ、あたし本を書いてお金持になり有名になれたらいいわ。それがあたしに似合っているの。それ、あたしの大好きな空想よ。」
「あたしのは、無事におとうさんやおかあさんといっしょに家で暮して、家の人たちの世話をしてあげることですわ。」と、ベスがいうと、ローリイが尋ねまし
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