いけませんよ。」
「どうもありがとう。なんでもします。だって家は、さばくみたいに退屈です。」
ローリイは、うれしそうでした。
「それでは、あたしが、かかとをあんでいるあいだに、この本を読んでしまってね。」
ジョウが本をわたすと、ローリイは、はいと、うやうやしく答えて「はたらきばち会」に入会させてくれた好意に感謝して、熱心に読みはじめました。その物語はあまり長くはなく、ローリイは読みおわると、労にむくいてもらう[#「もらう」は底本では「もろう」]ために、二三の質問を出しました。
「ちょっとうかがいますが、この有益な会は、新らしくできたんですか?」
姉妹たちは顔を見合せました。秘密にしておくべきか、それともうち明けるべきか? ローリイにならいってもいいと、みんなは考えました。ジョウは、にっこり笑っていいました。
「あたしたち、巡礼あそび[#「あそび」は底本では「あそぴ」]を、冬から夏までつづけて来たの。そして、この休暇には、怠けないようにと思って、めいめい仕事をこしらえて精いっぱいやりました。休暇はもうじきおわりますが、仕事はみんなできて、よろこんでいますの。ところで、おかあさんは、あたしたちを、外へ出したがっていらっしゃるので、この丘へ仕事を持って来て、おもしろくやっているの。」
ローリイは、うなずいていいました。
「ああ、それで、ふくろをしょい、杖をつき、古い帽子をかぶるんですね。」
「あたしたちは、この丘のことを、よろこびの山といってますの。ずっと、むこうまで見わたせるし、[#「、」は底本では欠落]あたしたちが、いつかは住んでみたいと思う国も見えるからです。」
ジョウが、ゆびさしたので、ローリイは立ちあがってながめました。あおい川、ひろびろとした草地、そのむこうのみどりの山々、その峰にたなびく金と紫の雲、まことに、天の都を思わせるものがありました。
「なんてうつくしいんだろう!」と、ローリイは、美しさをす早く見つけました。
「あのうつくしい景色のところが、あたしたちのほんとの国で、みんなでそこへいけたら、うれしいと思うわ。」と、ベスがいいますと、メグは、やさしい声で、
「あれよか、もっとうつくしい国があるのよ。あたしたちが、りっぱな人になったら、そこへいけるのよ。」と、いいました。
「ベスなんか、いつかいけるでしょうが、あたしなんか、戦ったりはたらいたり
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