に、
「アメリカのおじょうさんがたは、先祖がそうであったように、独立し自活することがたっとばれるのです。」と、いいました。
 ケイトは、眉をひそめて、去っていきましたが、それを見送りながらメグはいいました。
「あたし、イギリス人が、女の家庭教師をけいべつすることを忘れていました。」
 ブルック先生は、むしろ満足そうに、
「あちらでは、男の家庭教師だってよくいいません。なさけないことですがね、なんといっても、われわれはたらく者には、アメリカほどいいところはありません。」と、いったので、メグはじぶんのことを嘆いたのを、むしろはずかしくなりました。
「ええ、あたしアメリカに生れたのをうれしく思いますわ。そのために、たくさんのよろこびを得ているのですから。ただ、あたし、あなたのように教えることが好きになれたら、どんなにいいでしょう。」
「ローリイがあなたの生徒だったら、あなたも教えるのがたのしくなります。来年ローリイと別れなければならないので、ざんねんですよ。」
「大学へいらっしゃるのでしょう?」
「そうです。準備はだいたいできています。ローリイがいけば、ぼくは軍隊にはいります。」
「まあ、すてき! わかい男のかたは、兵隊にいきたがるのはほんとですね。お家にのこるおかあさんや、姉妹たちはつらいでしょうが。」
「ぼくは一人ぼっちです。友だちもすくないし、ぼくが死のうが生きようが、たれも心配する者はいません。」
「ローリイやおじいさんが心配なさいますわ。それに、あたしたちだって、あなたがおけがでもなされば、悲しみますわ。」
「ありがとう。そう聞いてうれしく思いますよ。」と、ブルック先生は、また快活になって話しつづけましたが、ネッドが馬にのって来たので、しずかに話し合うことはできませんでした。
 たった一つ、メグやジョウのおどろいたことがありました。それは、ベスが、人をよろこばせたいという一心から、足のわるいフランクに話を聞かせてやっている光景でした。それは、また、フランクのいもうとにとっても、びっくりするようなことで、いもうとのグレースは、
「フランクにいさんが、あんなに笑っているの知らないわ。」と、いいました。
 日ぐれ近くまで、また、いろいろのあそびをしました。帰り支度は、みんなでやり、テントをたたみ、クロッケーの鉄輪をぬき、一行はボートにのりこみ、声はりあげてうたいながら
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