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   おもひで話

ゆうべのことだ
ストーブのなかで
ぼくだけ聞《き》いた。

むかしのむかし
土《つち》ンなかにゐた時の
石炭たちの
おもひで話

くすくす笑《わら》つて
まつ赤《か》になつて
石炭たちの
おもひで話。

ゆうべのことだ
ストーブのなかで
ぼくだけ聞いた。
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   白いお手

ひとりぼつちでゐる時に
ぼくはいつでも思ひだす

それはきれいなねえさんの
ほんとにやさしい白いお手

「おりこうさんね」といひながら
ぼくの頭をなでたお手

いつのことやら忘れたが
どこのだれやら忘れたが

ぼくはいつでも思ひだす
そしてなぜだか涙ぐむ。
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   風と月

子供よ 子供よ
どこへ行く?
はりがね持つて
どこへ行く?

風をしばりに
行くんだよ
だつてかあさん
ご病氣で
風が吹くのが
さみしいの。

子供よ 子供よ
どこへ行く?
ふろしき持つて
どこへ行く?

月をつつみに
行くんだよ
だつてかあさんは
ご病氣で
月が照るのが
かなしいの。
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   あがり双六

あがり双六《すごろく》
東海道
五十三次
長道中《ながどう
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