くらまんぢゆう
押しくらまんぢゆう
ぎゆう ぎゆう ぎゆう。
やれ押せ それ押せ
みんな押せ
押したら寒さが
逃げてくぞ。
押しくらまんぢゆう
ぎゆう ぎゆう ぎゆう。
押してりやぽかぽか
あつたかい
出來たてまんぢゆう
けむが出る。
押しくらまんぢゆう
ぎゆう ぎゆう ぎゆう。
苦しい痛《いた》いで
飛び出すな
つぶれたまんぢゆう
しやうがない。
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さくらと雀
三月さくらの
花ざかり
枝をくぐつて
花のなか
ちよんちよん雀が
ちよんと飛ぶ。
飛べば小枝が
ゆすぶれて
惜しやさくらの
花びらが
ぱらぱらぱらり
散るけれど、
三月さくらの
花ざかり
花にうかれて
うれしいか
ちよんちよん雀は
ちよんと飛ぶ。
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白いマント
富士山が
富士山が
白いマントを
ぬいぢやつた。おや、ぬいぢやつた。
今日見りや白い
帽子だけ
横つちよかぶりに
かぶつてた。おや、かぶつてた。
富士山の
富士山の
白いマントは
どうしたろ、おや、どうしたろ。
おてんとさんと
春風が
どつかへ隱して
知らぬ顏、おや、知らぬ顏。
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いい毛布
春の野原は
いい毛布《けつと》
草はやさしく
やはらかい
ごろんと横に
ころがれば、
ほかほかぬくい
日が照つて
どうやらすこし
ねむくなる。
春の野原は
いい毛布
草はふはふは
やはらかい
ひばりのうたを
ききながら、
草のにほひを
かいでれば
うとうといつか
花のゆめ。
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お菓子
わたしがもしも王子なら
家來《けらい》を呼んで云ひつけよう。
子供をみんなつれて來て
おいしいお菓子を分けてやれ。
二つのお手にのらぬほど
たくさんたくさん分けてやれ。
けれど、わたしは王子ぢやない
お菓子屋の店《みせ》の前に立ち、
今日もお菓子に見とれては
さういふことを思ふだけ。
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手紙
家《うち》へ歸れば
机のうへに
そつとのつてる
手紙が一つ。
讀まぬさきから
すつかりわかる
だつて手紙は
もみぢの枯葉。
そろそろ冬に
なり候
御用意なされ
たく候。
出したお方《かた》は
神さまだらう
冬の來たのを
知らせる手紙。
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巨きな百合
とても巨《おほ》きな
白い百合
なかには露が
たまつてる。
ぼくははだかに
なつちやつて
露の水風呂《みづぶろ》
つかふんだ。
花のにほひの
とけこんだ
露は身體《からだ》に
しむだらう。
ぼくは顏だけ
出したまま
ララララララと
うたふんだ。
とても巨きな
白い百合
咲いてるとこを
知らないか。
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芒と月
さつさ、すすきの
白い穗は
風に吹かれて
みなうごく
さつさ、うごけば
白い手よ
おいでおいでと
みなまねく。
さつさ、まねけば
雲《くも》のかげ
月がちらりと
顏出した。
さつさ お月さん
出した顏
にこにこわらつて
まんまるい。
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青いかげ
青いね、青いね
森のなか
お顏のうへの
青いかげ
白い服にも
青いかげ。
青いね、青いね、
森のなか
心にもさす
青いかげ
心がひつそり
澄んで來《く》る。
青いね、青いね、
森のなか
ときどきみんなで
來てみよね
なんだかふしぎな
ところだね。
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秋風
この風こそは
秋風よ
さらさらさらと
さびしいよ。
山の兎は
長い耳
立ててひつそり
聞いたらう。
山の小萩《こはぎ》は
ほろほろと
花をこぼして
吹かれたらう。
この風こそは
秋風よ
山から吹いて
さびしいよ。
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ほんとにしないけど
みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに見たんだよ。
あの夕やけの西の空
赤くそまつた雲のうへ
肥つたはだかのかはいい子。
みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに聞いたんだ。
その子が鳴らす金の鈴
遠くかすかにさはやかに
胸にしみ入るいいひびき。
みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに知つてゐる。
その子はぼくを好《す》いてゐて
鈴を鳴らしてうれしそに
おいでおいでと誘ふんだ。
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おとぎばなし
おとぎばなしを探《さが》さうと
町へ出かけてみたけれど
町はほんとにつまらない。
青い乘合自動車は
青いあひるのやうだけど
金の卵は生まないし
角《かど》の大きなビルデイング
お城のやうだが窓からは
さびしい王子は見てないし
いろんな人も通るけど
銀の魔法の杖をもつ
お爺さんは通らない。
やつぱり庭の芝のうへ
空を見ながらねころべば
おとぎばなしは見つかるよ。
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雪
吹雪《ふぶき》の山でまた一人
死んだと出てる新聞を
見な
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