した。バイオリンを弾いていた楽手達も、同じように見とれて、弾く手をやめてしまいました。
『いったい、どなただろう? ついぞ見かけたことのない方だが……』
『まったく、絵のなかから、ぬけて来たような方だ!』
 こんなささやきが、あちこちで起りました。
 王子さまは、一番上席へシンデレラを腰かけさせました。そして、お茶やお菓子や果物をすすめました。
 やがて、音楽がはじまると、待ちかねた王子さまは、さっそくシンデレラと踊りました。二人のステップはよく合います。二人は、風のなかの花びらのように、かるがると踊りました。それは、なんともいわれない楽しさでした。
 踊り済むと、シンデレラは、自分の姉さんたちが腰をかけている長椅子に腰をかけました。そして、王子さまからいただいた蜜柑《みかん》をわけてやりました。
『まあ、ありがとう存じます。わたしたちに、こんなに御親切にしていただいて……』
 二人は、このお姫さまから、わざわざ蜜柑をいただいたことを、たいそう光栄に思って、ていねいにお礼をいいました。
 シンデレラは、くすぐったいような気持がしました。
 それから、シンデレラは、何度も王子さまと踊って
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