、楽しい時間を過しました。そのうちに、時計の針はめぐって、十二時近くになりましたので、お化粧室へ行くようなふりをして、そっと外へ出て、また馬車に乗って帰って来ました。
『どうだったね? 楽しかったかい?』
 お婆さんが迎えてくれて、そう尋ねました。
『ありがとうございました。ほんとうに楽しい舞踏会でした。王子さまと、何度も踊りましたわ。』
『よかった、よかった。さあ、それでは家まで送って行ってあげよう。』
 家へ帰って来た時には、もとのぼろ服の、シンデレラになっていました。

    落した靴

 次の日の朝、姉娘たちは、シンデレラをうらやましがらせようと思っていいました。
『昨夜《ゆうべ》の舞踏会は、とてもおもしろかったよ。それに、美しいどこかのお姫さまが、わたしたちのそばへ来て、王子さまからいただいた蜜柑を、わざわざ下すったんだよ。』
『大勢いたけど、わたしたちは、やっぱり、目につくのねえ。』
『それはそうよ。あのお姫さまは別だけど、わたしたちほど、りっぱな服を着ている者はいないのだもの。』
 シンデレラは、ほほえみながらいいました。
『まあ、そのお姫さまは、どんなにきれいな方でし
前へ 次へ
全17ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
水谷 まさる の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング