笥からたくさん服を引っぱり出して、頭のさきから足のさきまで映る大鏡の前で、あれを着てみたり、これを着てみたり、大騒をしました。
 おかげで、シンデレラは、二人がいっぱい脱ぎ捨てた服を、たたんだり、火のしをかけたり、まる一日忙しい目に逢いました。
 お母さまが、心配してお部屋へ入って来ました。
『お化粧はできたのかい? 着て行く服はきまったのかい? さっさとしないと、時間に遅れますよ。』
 そこで姉娘は、やっと決心をして、
『わたしは、やっぱり、縫いとりのついた、赤い天鵞絨《ビロウド》の服にするわ。』
 と、いいますと、妹娘も、
『それじゃ、わたしは金の花模様のある服と、ダイヤモンドのついた胸当をして行くわ。』
 と、いいました。
『だけど、お母さま、あんまり服を持っているのも、こういう時には苦労ですわ。燃えがら姫だったら、ほんとに世話はないんだけど。』
 姉娘がそういうと、お母さまも妹娘も声をあげて笑いました。ほんとに、シンデレラは、一枚だって服らしい服を作って貰ってはいないのでした。
 うつむいて服をたたんでいたシンデレラは、その意地のわるい言葉を聞いて、思わず涙ぐんでしまいましたが
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