や、やさしい子守唄をうたって貰ったことなどが、ひっそりと、まるで夕暮の影のように、胸に残っていました。シンデレラは、そのお母さまの思出《おもいで》を、今度の新しいお母さまに結びつけるのでした。そして、胸をわくわくさせながら、お母さまの来る日を待っておりました。
 やがて、シンデレラの家に、お母さまが来ました。ところが、いっしょに住んでみると、そのお母さまは、考えていたのとは非常にちがっていました。年もとっていましたし、顔だってきれいではありませんでした。けれど、そんなことは、どうでもよかったのですが、なによりも失望したのは、やさしみがないことでした。また、二人の新しい姉も、お母さまとよく似た意地悪の娘でありました。
 お母さまと二人の姉とは、お父さまの前では、シンデレラに冷たいそぶりも見せませんでしたが、お父さまがいないと、がらりと変っていろいろと辛くあたるのでした。
 それは、シンデレラが、きれいであったためです。きれいなのを妬まれたのです。けれど気だてのすなおなシンデレラは、そんなことは露知らず、冷たくされるのは自分が至らぬせいだと、あきらめておりました。
『みんな、あたしがわるい
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