デレラはお父さまと二人で暮して来て、お母さまの愛に飢えきっていました。お母さまのいない家庭は、炉に火が消えているのと同じようなもので、なんとなくもの足らないものですが、いよいよこれで望《のぞみ》がかないました。シンデレラは、うれしくてうれしくて堪りません。それで、お父さまに向かって、いろいろと今度来るお母さまについて尋ねるのでしたが、お父さまはにこにこ笑って、
『お前をかわいがってくれるというので、貰《もら》う気になったのだよ。だから、どんなお母さまかたいていわかるだろう。おまけにね、いい姉さんを二人連れて来るよ。』
シンデレラは、いよいようれしくなりました。お父さまのお言葉で、どんないいお母さまか、たいてい想像がつきました。それに、二人のお姉さんができるというのです。こんなうれしいことはありません。春の潮《うしお》のように、新しい幸福が、胸に押し寄せて来るのでありました。
シンデレラは、小さい時に別れたお母さまのことを、ほとんど忘れていましたが、それでもお母さまの味わいというものを、おぼろげながらも、覚えておりました。膝《ひざ》のうえにのせられて、お船のように揺《ゆす》られたこと
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