、広間の大時計が十二時をうち出したので、すっかり驚いてしまいました。
シンデレラは、あわてて王子さまのそばを離れ、足の早い鹿のように、広間を飛び出しました。王子さまも驚いて、すぐに後を追いましたが、とうとう追いつくことはできませんでした。ただ、あんまり急いだシンデレラが、片方の足のガラスの靴のぬげたのを、拾う暇もなく逃げ出したので、王子さまはそれを拾いあげました。そして、門を守っている番兵のところへ行って、
『あのお姫さまを見かけなかったか?』
と、尋ねますと、
『はい、見かけませんでした。ただ見すぼらしい服を着た娘が、出て行っただけでございます。』
と、答えました。
『そうか。』
王子さまは、残念そうに、そう言って溜息をつきました。
王子様の花嫁
シンデレラは、息をきらしながら、家へ帰って来ました。そして、屋根裏の、きたない自分の部屋に入って、
『ああ、よかった。』
と、ほっと安心しました。
ただ一つ、残っている片方のガラスの靴が、楽しい夢のかたみとなりました。シンデレラは、それを戸棚のなかにしまいました。
さて、王子さまは、美しいお姫さまのことが忘られま
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