[#小書き片仮名ヲ、394−下−10]ルターの第二の手紙をよみつゞけました。けつきよく、ウ※[#小書き片仮名ヲ、394−下−11]ルターは、ひどい病後の、よろ/\したからだをもかまはず、アデンの町へよろけ入つて、ドイツ人の倉庫から例の時計仕かけの爆発薬をすつかり盗み出すと一しよに家族たちを都合のいゝ或場所へつれて来ました。それから、家内の父親の持つてゐるモーターボウトを借り、チグリス河をさかのぼつてバスラといふ町へつきました。そして、こゝから、さらに三百マイルの間を、右手しかない、その片手でかぢをとつて、バグダッドまで乗りこんだのです。
ウ※[#小書き片仮名ヲ、395−上−1]ルターはアデンで、運よく、爆薬と一しよにドイツの将校の軍服、軍帽をも盗み出しました。その軍服のポケットの中に、偶然一まいの見取地図がはいつてゐました。その地図に、ウ※[#小書き片仮名ヲ、395−上−4]ルターの目ざすバグダッドの、トルコ軍の火薬庫の位置が、はつきりと、かき入れてありました。ですからウ※[#小書き片仮名ヲ、395−上−6]ルターには、もう、仕事は、バグダッドへ入りこむだけで十分なわけでした。
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