した。
ウ※[#小書き片仮名ヲ、393−上−19]ルターはドイツ人を見ると、すかさず、そのあとを、つけていきました。二人は、ゆつくり歩きながら、しきりに何事をか話しつゞけてゐます。やがて、或さびしい脇道へはいりました。と、向うに一棟の倉庫が見えます。ウ※[#小書き片仮名ヲ、393−下−2]ルターは、あとをつけてるのだと感づかれないやうに、わざと二人を追ひぬいて、倉庫の前へ来て地びたに坐りました。そして丁度お午なので、マホメット信者のすべてがするやうに、その場にひれ伏して神さまにお祈りを上げてゐました。ドイツ人二人は、そのそばを通りかゝりました。一人は、畜生、往来の邪魔をする、といはないばかりに、靴の先でウ※[#小書き片仮名ヲ、393−下−8]ルターの肩先を蹴りのめして通りました。ウ※[#小書き片仮名ヲ、393−下−9]ルターは、それでも顔も上げないで一生けんめいに祈りつゞけてゐました。
ドイツ人たちは、ふとウ※[#小書き片仮名ヲ、393−下−11]ルターから二三歩はなれた片わきに立ちどまりました。彼等はドイツ語なぞを聞きわけるはずもないアラビア人の乞食とおもつてばかにしたのかウ※[
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