人で身を寄せて、あくる日からまいにち、昼も夜も、つゞけさまに彼女の家の焼けあとに坐つて彼がかへつて来るのを待つてゐたのでした。戦争前から、どこにゐるのか、たゞの一どもたよりをよこさない彼が、何といふわけもなく、きつと今にも、ひよつこりと帰つて来るやうな気がして、一日に一度、夕方に食事にかへる以外には、たえず、あの林の下で待ちくらしてゐたといふのです。
ふしぎにも彼は全くそのとほり、かうして彼女の下に、彼の最愛な三人の子供の下に、かへつて来たのです。
彼は今、百合の花のごとくに純情な彼の妻と、小猫のごとくに可愛らしい子供たちとにまもられて、無限の幸福の下に、少しづゝ健康をとりかへしてゐます。しかし、僅かな体力が再び彼にかへるにつれて彼は、又つぎの任務を――イギリスのために尽すべき最後の努力を考へ夢みてゐます。」
第一の手紙はこれで終つてゐます。ホームス牧師はいつしか目に涙をにじませながら、つぎの一通をとり上げました。
四
ウ※[#小書き片仮名ヲ、392−下−2]ルターは再びよろ/\歩けるやうになると、すぐにアデンの町へ出かけました。そしてトルコ兵やドイツ人たちの隠謀
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