事についてゐるのだとおもはれました。
ヘナンのうちへつきますと、水車もとまつてをり、柵もとざされ、粉をはこぶ獣も人も、みんなかへり去つてゐました。下ばたらきのものが私たちのために戸をあけてくれたとき、馬や羊が、わらの中にうごきました。鳥小屋のとまり木の上では、はげしい羽ばたきの音と、おそれのさけび声がしました。それらの生ものが、みんな、こはいクロック先生を知つてゐでもしたやうに。
水車場の人たちは、あたゝかな、あかるくあかりのついた大きな台所で食事をしてゐました。時計の振子から、釜にいたるまで、みがかれ、光つてゐました。
ガスパールはヘナンと、おかみさんとの間にはさまつてテイブルのはしにすわり、だいじにされ、愛しなでられてゐる、幸福な子のうれしさを顔中にあふれさせてゐました。
ガスパールは、にげかへつて、けふはオーストリアの大公の、だれ/\のお祝ひで、ドイツ人にも祭日なので、かへつて来たのだと、こしらへごとを言つたのです。それでヘナンやおかみさんたちは、ガスパールのかへつたのを祝つてゐるところだつたのです。
ガスパールは、クロック先生が来たと知ると、かはいさうに、どこかににげ
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