した。ガスパールはすでに二月以上も外の空気をすはなかつたので、先生は、ガスパールを私たちと一しよに、村のはづれの牧場《まきば》へつれていきました。
その日は、すばらしい、いゝお天気でした。私たちは人取りあそびをして、せい一ぱい走りまはりました。雪や氷すべりを思ひ出させる、つめたい北風を頬にうけて、はしやぎ喜びました。
ガスパールは、いつものやうに、みんなからはなれて森のへりに立ち、木の葉をうごかしたり、枝を切つたりして、一人であそんでゐました。しかし、かへるとき、整列すると、ガスパールが一人だけゐません。みんなでさがしまはり、よび立てました。ガスパールは、にげ出したのです。クロック先生はいきり立ちました。先生の太い顔がまつ赤な色になり、舌のさきはドイツの、のろひの言葉でこはゞりもつれました。
先生は、みんなをつれてかへつた上、私と、もう一人、大きな生徒をつれてガスパールの叔父のヘナンの水車場へ向つていきました。
夜になりました。どの家でもみんな窓をとぢてよくもえた火と、日曜日のおいしいごちそうとであたゝまつてゐました。一すじの火影が道の上に流れてゐます。人々は、もう部屋の中で食
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