、この森の先まで一しよにいつて、そこからかへつて来るの。そして、母さまと一しよにお家《うち》の番をするの。」と言ひました。猟人は、その子をつれて森のはづれまで来ますと、
「もうこゝからおかへり。これは家《うち》のお部屋中の鍵《かぎ》だから、おまへにあづけておく。」と言つて、鍵のたばをわたしました。そして、
「よく言つておくが、どんなことがあつても、二階の小さいお部屋へはいつてはいけないよ。そのお部屋の鍵穴にこの金の鍵がはまるのだが、あすこだけは、けつして開けてはいけないよ。」と、いくども言つて聞かせました。男の子は分つた/\と、うなづきました。猟人は、
「では、なんにもこはいことはないから、おとなしく待つてお出《い》で。」と言つて、わかれました。
 男の子はまた森をとほつて、お家《うち》へかへつて見ますと、お母さまが戸口に立つて、しく/\泣いてゐます。男の子は、「どうして泣いてゐるの? 私《わたし》がかへつたから、どろ坊が来てもこはくはないでせう?」と言ひました。するとお母さまは、
「どろぼうなんかはちつともこはくはない。」と言ひました。
「それでは何が悲しいの?」
「だつて父さまは、
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