し》は何にもほしくはない。あなたが私のお嫁になつてくれゝば何にもいらない。」と言ひました。
星の女は、着物をとり上げられては、もう下界をはなれる魔力もなくなつたので、しかたなしに猟人のお嫁になりました。
猟人は、星の女をだいじにかはいがりました。星の女の姿は、すゐれんの花のやうに美しく、その声は、どんな小鳥の声よりも、もつとやさしくひゞきました。
猟人は毎日猟に出て、食べものを取つて来ました。そして星の女に、その日のいろ/\の楽しいお話をしました。
しかし星の女は、そういふ中でも、大空のお家《うち》を忘れることが出来ませんでした。女は、月のでる晩には、一人ですゐれんの泉のそばに出て、大空を見ては泣きました。せめて二人の姉の星が、もう一ど下りて来てくれゝばいゝのにと思つて、待ちこがれてゐましたが、二人はだまつて青い目をまばたいてゐるきりで、毎晩蜘蛛の王さまが糸を下《おろ》しても、ちつとも下りて来ようとはしませんでした。
二
そのうちに、星の女には、つぎ/\に男の子が三人も生れました。星の女はその子たちが大きくなるのを、たゞ一つの楽しみにして暮しました。
そのつぎ
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