う言ひ/\さめ/″\と泣きました。
「母さまのお家《うち》はどこにあるの? こゝからよつぽどとほいの?」と、男の子は聞きました。
「それは、あとでお父さまにお聞きなさい。」
星の女は、かう言つて、間もなく空へかへつてしまひました。
五
あくる日になりますと、男の子はお父さまがもうかへるか、もうかへるかと思ひながら、いちんち戸口に立つて待つてゐました。さうすると、やつと夕方近くなつて、向うの森の中に、お父さまのかへつて来る姿が見えました。男の子は走つて迎へにいつて、
「父さま、私《わたし》はずゐぶん悪いことをしたの。女の人が二人、私が寝てゐるうちに来て、母さまがかはいさうだから、二階のお部屋をおあけと言つたから、金の鍵《かぎ》であけたの。さうすると玉の飾りの一ぱいついた、きれいな着物があつたから、母さまに見せたら、母さまが貸してくれと言つた。そしてその晩、外からたれかゞ謡《うた》をうたつて母さまをよぶと、母さまはその着物を着たまゝいつてしまつたの。」
かう言つて泣き/\話しました。お父さまはそれを聞くとびつくりして、
「ごらんよ、私《わたし》のいふことを聞かないから、
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