は夜になればまた来て下さるから。」と言つて、なだめました。しかし弟は、何と言つても泣き止《や》まないので、しまひには涙で目がまつ赤《か》にはれました。
 そのうちに、日がくれて、空には星が一ぱい出ました。すると間もなく、入口の戸があいて、お母さまがかへつて来ました。
 二ばん目の男の子は、走つて来て、お母さまの手に取りついて泣きながら、
「二人きりでこゝにゐるのはいや。母さまのお家《うち》へつれてつて。」と言ひました。
 お母さまは二人に頬《ほほ》ずりをして、またゆうべのやうな、おいしい果物を分けて食べさせました。一ばん上の男の子は、
「母さまはとう/\二人ともお家《うち》へつれてつてしまつたのね。父さまがかへつたら、何と言へばいいの。」と心配さうに聞きました。お母さまは、
「それはまたあとでお話するから、早くお食べなさい。」と言ひました。
 男の子は、ひもじくてたまらないので、急いで果物を食べました。そして、もう悲しいことも心配ごともわすれて、お母さまと楽しくお話をして、しまひに寝床へはいりました。
 男の子は明け方ぢかくに、ふと目がさめました。さうすると、また外に歌の声がしてゐまし
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