は、金と銀の糸でおつた、色々の宝石の飾りのついた、きれいな着物がかけてありました。
 おろして見ますと、その着物の胸のところには、大きな紅宝石《ルービー》がついてゐました。飾りの宝石もその紅宝石《ルービー》も、ちようど夜の空の星のやうに、きら/\とまぶしく光ります。男の子はびつくりして、その着物をお母さまに見せようと思つて持つて下りました。
 しばらくするとお母さまは、二人の男の子と、赤ん坊とをつれてかへつて来ました。男の子は、
「母さま/\、こんなきれいな着物が二階にありました。着てごらんなさい。」と言ひました。お母さまは、それを見ると、うれしさうにほゝゑんで、すぐにからだにつけました。子どもたちは、お母さまがその着物を着て、きれいなお母さまになつたものですから、よろこんで踊りまはりました。男の子は、
「父さまがかへるまで、毎晩貸して上げる。そして父さまがかへつたら、私がたのんで、もらつて上げる。」と言ひました。お母さまは、
「今晩赤ちやんを寝かせるまで貸しといておくれね。」と言ひました。男の子は、
「それまで着て入らつしやい。」と言ひました。
 男の子はその晩は、いつまでも眠らない
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