一ばん上の姉が言ひました。下の二人も同じやうに下りたいと言ひました。
 すると、高い山のま上を歩くのが大好きな、月の夫人がそれを聞いて、
「そんなにいきたければ、蜘蛛《くも》の王さまにそう言つて、蜘蛛の糸をつたはつて下《おろ》しておもらひなさい。」と言ひました。
 蜘蛛の王さまは、いつものやうに、網の中にすわつて、耳をすましてゐました。星の女たちは、その蜘蛛の王さまにたのみました。蜘蛛の王さまは、
「さあ/\、下りていらつしやい。私《わたし》の糸は空気のやうにかるいけれど、つよいことは鋼《はがね》と同じです。」と言ひました。
 三人はその糸につかまつて、一人づゝ、する/\と泉のそばへ下りて来ました。
 泉の面には、月の光が一面にさして、すゐれんの花のなつかしい香《にほひ》がみなぎつてゐます。三人はきらびやかな星の着物をぬいで、そつと水の中へはいりました。
 すが/\しい、冷たい水でした。三人はしづかにすゐれんの花をかきわけていきました。三人のはだ[#「はだ」に傍点]には、水のしづくが真珠のやうにきら/\光りました。
 と、その泉のぢきそばに、或《ある》若い猟人《かりうど》が寝てゐました
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