と、一ぺん/\くりかへして話をして、おこつたり、くやしがつたりしつゞけました。
 となりのお百姓は、
「どろぼうをよせつけないやうにするには、犬をお飼ひになるにかぎります。」と言ひました。
「なるほど、犬がゐればね。」と、おばあさんは、くびをかしげました。
「大きな犬ぢや、食はすのにかゝりますから、かんがへもんですが、いつまでたつても大きくならない、そしてよくほえる、小さな犬がゐますよ。」
 みんながかへつてしまつてから、おばあさんは、どうしたものかと、ながい間、ローズを相手にかんがへました。いゝにはいゝけれど、いくら小さな犬にしたつて食べものがいります。おばあさんは、一日に一どか二どづゝ、お皿《さら》や深皿へ、スープやパンや、いろんなあまりものなぞを一ぱいいれて、それをむざ/\食べさせなければならないとおもふと、それこそばか/\しく、もつたいない気がしてなりません。
「ね、ローズ、よさうかね。……でも一ばんにあれだけづゝとられては、たまつたものぢやァないね。ローズ、やつぱり飼つた方がいゝかね。」と、おばあさんは同じことばかりくりかへしました。
 ローズは生きものがすきなので、それァど
前へ 次へ
全14ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング