どいぢやないか。まあ、こんなに、あらしまはして……。おやおや。……まあ、あきれた。一《ひ》ィ二《ふ》ゥ三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十もほつていつたよ。まあ。おまいもまた何をぼや/\してゐたの。ほら、こゝんとこをかうはいつて、かう来たんだよ。ね、ほら、ちやんと足あとがついてるよ。そして、この壁へ足をかけて、その花どこをまたいだんだよ。まあ、何てづう/\しいやつだらう。きつとまた来るよ。一どとつたら、なくなるまでは来るよ。ほんとにゆだんもすきもありァしない。まあ、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、十だらう? 十もぬすんでいくんだから、あきれるぢやないか。ちよッ。おやそこんとこにも足あとがあるよ。」と、おばあさんは、おこつたりおびえたりして、ひつくりかへるやうにさわぎたてました。近じよの人たちがその声をきいて、どや/\出て来ました。
「おい、どろぼうがはいつたんだつて。」
「へえ、どこへ。」と、すぐに、そこからそこへと話がつたはつて、いろ/\の人が入りかはりやつて来ました。おばあさんは、その一人びとりの人へ、これ/\かうで、かうはいつて、かう来て、こゝへ足をかけて
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