ちに蛇つかひたちは、袋や籠《かご》をあけて蛇をとり出します。すると蛇は、たちまちしつぽ[#「しつぽ」に傍点]の方でからだをさゝへて立ち上り、によろ/\と上体をゆすぶりながら、タンブーリンの音《ね》に合はせて、にじり歩いてをどります。見物人は、それを見ると、はつはとよろこんで、お金をなげていくのです。
しかし、それらの蛇使は、そんなをどりを見せるばかりでなく、ときによると人の家《うち》へ出かけて戸口や窓をくん/\鼻でかぎまはしたあげく、このお家《うち》には蛇がゐるなどと言ひふらします。すると、家《うち》の人は気味がわるくなつて、では、どうぞつかまへていつてくれろと言ひます。そこで蛇つかひは、またタンブーリンをたゝき、れいの薄荷のやうなにほひのする烟をもう/\と立てゝ、シッ/\シッ/\と言つて、おびき出しますと、ふしぎにも、家《うち》の中にかくれてゐた蛇が、すぐにによろ/\とはひ出して来ます。蛇つかひはそれをつかまへてお金をもらひ、とつた蛇も袋に入れてもつていくといふやうなこともします。
或《ある》ときアフリカのカイローといふ町に、さういふ蛇使で顔の売れた、アブト・エル・ケリムといふ男
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