たそこでしぶ/\と、れいのあひづをしました。すると、大きな水をけの下から一ぴきはひ出しました。
「ようし、よし。さ、この中へ入れてくれ。これで四ひきだ。さあ、あと二ひきを早くお出し。これ/\小使、つぎのびんの口をあけておけ。」
 ケリムはとう/\こまつて、思はず、
「エンタ、タフェッスド、セナー。」とさけびました。それはアラビヤ語で、「ほんとに、ひどい、人いぢめだ。」といふ意味でした。ケリムは、この上、ていさいを作りとほさうとすれば、あとの二ひきの蛇も、みんなデラポールトにとられてしまふので、
「どうぞ、もう、あとはお許し下さいまし。」と、とう/\本音をはきました。デラポールトは、くすくす笑ひました。でも、あまりかはいさうなので、あとの二ひきはかへしてやり、その上、三十枚の銀貨をくれておひ出しました。ケリムは、そのお金を、引つたくるやうにしてポケットへ入れて、
「ちよッ。あのよくなれた蛇四ひきを三十ピアスターでとられちや合はないや。」と、うらめしさうにぶつ/\言ひ/\出ていきました。



底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版
   1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第六巻」文泉堂書店
   1975(昭和50)年9月
初出:「赤い鳥」赤い鳥社
   1923(大正12)年7月
入力:tatsuki
校正:林 幸雄
2007年2月19日作成
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