うもり」に傍点]が、こはれおちてゐる煙筒《えんとつ》の上へ来てとまりました。それは、二人の王女と、妖女の王さまとが、さういふ魚とかうもり[#「かうもり」に傍点]とになつてしまつたのでした。かうもり[#「かうもり」に傍点]になつたのは妖女の王さまでした。


    七

 若ものはそのまゝ鐘をもつて、いそいで岸へ上りました。
 すると、さつきまでどん/\あふれてゐた湖水は、いつの間にか、もとのとほりに水が引いてゐました。若ものはそれを見て安心して、家《うち》へかへりかけますと、向うから、それは/\年を取つたよぼ/\のおぢいさんが出て来て、若ものゝ足下にひざをついて、ぽろ/\と涙をながしながら、いくどもいくどもお礼を言ひました。そのおぢいさんのくびには、これまで、例のふしぎな黒い牡牛《をうし》のくびにつけてあつた綱がまきついてゐました。
 それは、鐘をぬすんで湖水へ投げこんだ、あの牛飼《うしかひ》でした。牛飼は、妖女《えうぢよ》の王さまの魔法にかゝつて、こんなよぼ/\のおぢいさんになるまで、永い間牛にされてゐたのが、若ものが鐘を鳴らしてくれたおかげで魔法がやぶれて、やつともとの人間にかへ
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