は、
「それよりもあなた方は、礼拝堂の鐘をこのくらにかくしてゐるでせう? 早くそれをこゝへお出しなさい。」と言ひました。
すると二人の妖女も、小さな妖女たちも、たちまちぶる/\ふるへながら、大声を上げて泣き出しました。妖女の王さまも、小さくなつて、がた/\ふるへ出しました。
でも、仕方がないので、二人の妖女は、とう/\その鐘を出してわたしました。若ものは、鐘のさびをきれいにふきおとして、いそいで御殿を出ていきました。そして、御殿から少しはなれるとすぐに、ありたけの力を出して、鐘をじやアんと鳴らしました。
すると、今までりつぱにたつてゐた水晶の御殿は、またゝく間に、音もたてずに、ほろ/\とくだけて、珊瑚の柱も、真珠の天井も、みんな粉になつて、水の底の砂の上にちつてしまひました。
若ものはつゞけてもう一つじやアんと鳴らしました。すると今度は、湖水中のお化や、すべての小さな妖女が、一どに湖水の底へきえてしまひました。
若ものが三度目にじやアんと鳴らしますと、二ひきのほそい銀色の魚が、くづれおちた御殿のまはりを、ぐる/\およぎまはりはじめました。それから一ぴきの大きなかうもり[#「か
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