うだい》二人の妖女は、若ものゝまへゝ来て膝《ひざ》をついて、
「どうぞおゆるしなすつて下さいまし。あすこのおくらには、金や銀やダイヤモンドや、ルービーや、珊瑚《さんご》や真珠が一ぱいはいつてをりますから、おいりになるだけお取り下さいまし。そしてもうどうぞ、このまゝおかへりになつて下さいまし。」
かう言つて、若ものをおくらへつれていきました。若ものは、
「私《わたし》はそんなものがほしくて来たのではない。それよりも、あすこの硝子《がらす》のはこにはいつてゐるびん[#「びん」に傍点]を下さい。」と言ひました。
妖女は仕方なしにその十二のびん[#「びん」に傍点]を出してわたしました。若ものはそれをうけとると、すぐに、片はしからびん[#「びん」に傍点]の口を開けました。するとその中から、たくさんの白い形をしたものが、うれしさうに大声をあげてさけびながら、どん/\飛び出して、御殿の外へかけ出しました。それは妖女たちがさらつて行つた人間のたましひ[#「たましひ」に傍点]でした。
二人の妖女は若ものゝきげんをとつて、どうぞこちらへ入らしつて、ごちそうをめし上つて下さいと言ひました。しかし若もの
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