け》といふ畠はすつかりこげついたやうに荒れてしまひますし、果物の畠も、そこらの木といふ木も一本ものこらず枯れてしまひました。それから、どこの家の井戸も、水がきれいに干上つてしまつたので、みんなはこまつて大さわぎをしました。
ところが例の湖水だけは、あべこべに、どん/\水がふえて、だん/\と岸の上へあふれ出して来ました。今までひでり[#「ひでり」に傍点]でさわいでゐた村の人は、今度はまた急に大水におどろかされてあわて出しました。
湖水の水は見てゐるうちに、おそろしい勢《いきほひ》で四方にひろがつて、今にも村中がのこらず、つかりさうになりました。
若ものゝお母さんの妖女は、そのまゝぢつとしてゐると、じぶんたちの命もあぶないので、息子の若ものをつれて水のふちへ行つて、こつそりと、湖水の秘密を話しました。
「この湖水の下には私《わたし》のお父さまの、王さまが、水晶の御殿の中に住んでゐるのです。私たちは三人の姉妹《きやうだい》だけれど、三人ともみんなお母さまがちがつてゐて、一ばんのお姉さまを生んだのは、大空の雲だし、中のお姉さまは地に湧《わ》く泉のお腹《なか》に生れ、私《わたし》は草の葉に
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