ふる露のお腹《なか》に出来たのです。
 お父さまの王さまは、それは/\気のみじかいひどい人で、人間と、人間の住んでゐるこの地面とがにくゝなると、すぐに、私《わたし》たち三人のお母さまを湖水の底へよびよせて、一と間へおしこめてしまふのです。それだから、今度も地の上がすつかりひでり[#「ひでり」に傍点]になつてしまつて、そのかはりに、湖水の水だけがこんなにどん/\ふえて来たのです。
 これなりはふつておくと、おまへのお父さんもおまへも私も、今にみんな、村中の人と一しよにおぼれて死なゝければなりません。
 それで、ごくらうだが、お前はこれから急いで湖水の底へ行つて来て下さい。あすこにまるめろ[#「まるめろ」に傍点]といふ木が生えてゐるでせう? あの枝を一本をつて、それを持つて水の下へもぐつておいきなさい。さうすると、いろんなお化《ばけ》が出て来て、追ひかへさうとするから、そのときにはまるめろ[#「まるめろ」に傍点]の枝でなぐつてやれば、お化はみんなおそれてにげてしまひます。
 それからなほずん/\いくと、黄色いすゐれん[#「すゐれん」に傍点]の花がたくさんさいてゐるところへ来ます。その花の向
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