は、紅宝石《ルービー》と緑柱石《エメラルド》のかざりのついた、きれいな水晶の御殿です。窓の外にはきら/\光る貝殻《かひがら》のやうな、うつくしい花が一ぱいさいてゐます。どうぞ一しよに来て下さい。さうすれば私《わたし》はあなたのお嫁さんになつて上げます。そして二人で楽しく暮しませう。」かう言つて若ものをさそひました。若ものは、
「でも私《わたし》たちは、あなたのやうに水の中には住めません。それよりも、私の家《うち》へ入らしつて下さい。私の家《うち》はよく日のあたるきれいな丘の上にたつてゐて、庭にはいろんな花がたくさんさいてゐます。朝になると、家中《うちぢゆう》には金のやうな黄色い日の光が一ぱいさします。それは水の中の紅宝石《ルービー》や緑柱石《エメラルド》でかざつた御殿よりも、もつと美しいだらうと思ひます。どうぞ私と一しよに入らしつて下さい。そして私のお嫁になつて下さい。」
 かう言つて頼みました。
 すると妖女は、こちらの岸へすら/\と泳いで来ました。若ものは、よろこんで、妖女のさし出す手を取つて、引き上げようとしました。すると、人間よりもずつと力のつよい妖女は、いきなり若ものゝ手をつ
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