かんで、
「あツ。」といふ間に、もう水の底へ引きこんでしまひました。
その翌《あく》る晩、二番目の息子は、同じやうにして、二ばん目の王女にだまされて、水のそこにしづんでしまひました。
四
そのあくる晩は三ばん目の息子の番でした。
母親は、つゞけて二人の息子になくなられたので、三ばん目の息子には、お前だけはどうぞ湖水のそばへいかないでおくれと泣き/\たのみました。息子は、
「何、だいぢやうぶです。私《わたし》はあすこへいつたつて、けつして妖女《えうぢよ》なんぞにまけはしません、安心してゐて下さい。」
かう言つて、晩になると、一人で出ていき、岸の、青い木の下に坐《すわ》つて、銀の笛を吹きはじめました。笛の音は、暗い水の上を渡つて、遠くまでひゞきました。
すると、やがて月が上《のぼ》るのと一しよに、妖女の王の三ばん目の王女が、ふうはりと水の上へ出て来ました。
その王女は三人のきやうだいの中で一ばん美しい妖女でした。今、その妖女は、ふさ/\した髪に、わすれな草の花冠《はなかんむり》をつけて、にじ[#「にじ」に傍点]でこしらへた、硝子《がらす》のやうにすきとほつてゐる、
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