た。命はそのとき、
「宇陀《うだ》の城《しろ》にしぎなわをかけて待っていたら、しぎはかからないで大くじらがかかり、わなはめちゃめちゃにこわれた。ははは、おかしや」という意味を、歌にお歌いになって、兄宇迦斯《えうかし》のはかりごとの破れたことを、喜びお笑《わら》いになりました。
 それからまたその宇陀《うだ》をおたちになって、忍坂《おさか》というところにお着きになりますと、そこには八十建《やそたける》といって、穴《あな》の中に住んでいる、しっぽのはえた、おおぜいの荒《あら》くれた悪者どもが、命《みこと》の軍勢を討《う》ち破ろうとして、大きな岩屋の中に待ち受けておりました。
 命はごちそうをして、その悪者たちをお呼びになりました。そして前もって、相手の一人に一人ずつ、お給仕につくものをきめておき、その一人一人に太刀《たち》を隠《かく》しもたせて、合い図の歌を聞いたら一度に切ってかかれと言い含《ふく》めておおきになりました。
 みんなは、命が、
「さあ、今だ、うて」とお歌いになると、たちまち一度に太刀を抜《ぬ》き放って、建《たける》どもをひとり残さず切り殺してしまいました。
 しかし命は、そ
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