よ険《けわ》しい深い山を踏《ふ》み分けて、大和《やまと》の宇陀《うだ》というところへおでましになりました。
 この宇陀には、兄宇迦斯《えうかし》、弟宇迦斯《おとうかし》というきょうだいの荒《あら》くれ者がおりました。命はその二人のところへ八咫烏《やたがらす》を使いにお出しになって、
「今、大空の神のご子孫がおこしになった。おまえたちはご奉公申しあげるか」とお聞かせになりました。
 すると、兄の兄宇迦斯《えうかし》はいきなりかぶら矢を射《い》かけて、お使いのからすを追いかえしてしまいました。兄宇迦斯《えうかし》は命がおいでになるのを待ち受けて討《う》ってかかろうと思いまして、急いで兵たいを集めにかかりましたが、とうとう人数《にんずう》がそろわなかったものですから、いっそのこと、命をだまし討ちにしようと思いまして、うわべではご奉公申しあげますと言いこしらえて、命をお迎え申すために、大きな御殿《ごてん》をたてました。そして、その中に、つり天じょうをしかけて、待ち受けておりました。
 すると弟の弟宇迦斯《おとうかし》が、こっそりと命《みこと》のところへ出て来まして、命を伏《ふ》し拝みながら、

前へ 次へ
全242ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング