た。
海の神はさっそくそのたいを呼んで、のどの中をさぐって見ますと、なるほど、大きなつり針を一本のんでおりました。
海の神はそれを取り出して、きれいに洗って命にさしあげました。すると、それがまさしく命のおなくしになったあの針でした。海の神は、
「それではお帰りになって、おあにいさまにお返しになりますときには、
いやなつり針、
わるいつり針、
ばかなつり針。
とおっしゃりながら、必ずうしろ向きになってお渡しなさいまし。それから、こんどからはおあにいさまが高いところへ田をお作りになりましたら、あなたは低いところへお作りなさいまし。そのあべこべに、おあにいさまが低いところへお作りになりましたら、あなたは高いところへお作りになることです。すべて世の中の水という水は私が自由に出し入れするのでございます。おあにいさまは針のことでずいぶんあなたをおいじめになりましたから、これからはおあにいさまの田へはちっとも水をあげないで、あなたの田にばかりどっさり入れておあげ申します。ですから、おあにいさまは三年のうちに必ず貧乏《びんぼう》になっておしまいになります。そうすると、きっとあなたを
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