になりました。その中でおあにいさまの火照命《ほてりのみこと》は、海でりょうをなさるのがたいへんおじょうずで、いつもいろんな大きな魚《さかな》や小さな魚をたくさんつってお帰りになりました。末の弟さまの火遠理命《ほおりのみこと》は、これはまた、山でりょうをなさるのがそれはそれはお得意で、しじゅういろんな鳥や獣をどっさりとってお帰りになりました。
 あるとき弟の命《みこと》は、おあにいさまに向かって、
「ひとつためしに二人で道具を取りかえて、互《たが》いに持ち場をかえて、りょうをしてみようではありませんか」とおっしゃいました。
 おあにいさまは、弟さまがそう言って三度もお頼《たの》みになっても、そのたんびにいやだと言ってお聞き入れになりませんでした。しかし弟さまが、あんまりうるさくおっしゃるものですから、とうとうしまいに、いやいやながらお取りかえになりました。
 弟さまは、さっそくつり道具を持って海ばたへお出かけになりました。しかし、つりのほうはまるでおかってがちがうので、いくらおあせりになっても一ぴきもおつれになれないばかりか、しまいにはつり針《ばり》を海の中へなくしておしまいになりました
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